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ノルウェーの”パパクオータ”制度に学ぶ、父親の育休取得を後押しする仕組みとその実態

日本でも男性の育休取得は少しずつ広がっていますが、「取得率は上がっても取得日数は短い」という課題がよく指摘されます。実はこの課題に世界で最も早く向き合ったのが北欧のノルウェーです。今回は、ノルウェーの”パパクオータ“制度と、そこから見えてくる父親の育休取得の実態について紹介します。

目次

その知見の概要

パパクオータ(父親割当制度)とは、育児休業の一定期間を父親だけが取得できる権利として割り当て、母親に譲渡できない仕組みのことです。父親が取得しなければその分の休業がまるごと消えてしまうため、「取るか、失うか」という制度設計になっており、結果として父親自身の育休取得を後押しする効果があるとされています。

エビデンス:ノルウェーの取り組みとその後

ノルウェーは1993年、世界で初めてこの父親割当制度(fedrekvote)を導入した国として知られています。制度導入前(1992年)は育児休業を取得する父親は2%程度にとどまっていましたが、導入からわずか数年で取得率は70%超まで急上昇したことが記録されています。父親の育休取得を後押しする制度として、この数字はしばしば海外の政策議論で引き合いに出されます。

父親の育休取得が家庭にもたらす影響:見えてきた複雑な実態

一方で、この制度が家庭にどのような影響を与えたかについては、専門家の間でも見解が分かれています。ノルウェー統計局のデータを用いたSara Cools氏・Jon H. Fiva氏・Lars J. Kirkebøen氏による研究(Scandinavian Journal of Economics, 2015)では、パパクオータ導入後の家庭を分析した結果、家庭内の家事・育児の役割分担そのものが大きく変わったという明確な証拠は見られなかったと報告されています。また同研究では、父親の育休取得によって母親側の就労・収入面にはややマイナスの影響が見られたことや、子どもの学力面での好影響は「父親が母親より高学歴である場合」など条件付きで限定的にしか確認されなかったことも示されています。つまり、パパクオータは父親の育休”取得率”を大きく押し上げた一方で、それが家庭内の在り方を自動的に良い方向へ変えるとは言い切れない、というのが実証研究から見えてきた実態です。断定的な期待は禁物ですが、少なくとも「父親が育休を取りやすい仕組み」自体には一定の効果があったと言えるでしょう。

日本の家庭で取り入れられる視点

日本でも「産後パパ育休」など、父親の育休取得を後押しする制度が整いつつあります。制度を使えるかどうかは職場環境にも左右されますが、次のような視点は今日からでも意識できます。

  • 「手伝う」ではなく「主担当になる」期間を作る:短時間でも、ある家事・育児タスクを完全に自分の担当として引き受けてみます。
  • 母親に頼らず自分のやり方を試す:最初はうまくいかなくても、自分なりのやり方を確立することが後々の自信につながります。
  • 取得できる制度を事前に調べておく:「産後パパ育休」や会社の制度を、子どもが生まれる前から確認しておきます。

私自身の育休取得を振り返って

私自身、実際に約1年間の育児休業を取得しました。制度に興味があっても、実際に取れるかどうかは本人の意思だけでなく、勤め先や上司の理解に大きく左右されるというのが率直な実感です。その点、最近は育休取得に理解のある企業が増えてきているように感じており、これは非常に前向きな変化だと思います。先日、来年入社予定の新卒の方と話す機会があったのですが、彼らはワークライフバランスを重視する視点を当たり前のように持っていて、正直、自分にはなかった感覚だと気づかされました。こうした社会全体の意識の変化が、今後の父親の育休取得にもポジティブに働いていくことを期待しています。

まとめ

制度を整えるだけで家庭の在り方が自動的に変わるわけではない——ノルウェーの実証研究は、そんな現実的な視点も教えてくれます。だからこそ大切なのは、育休を「取る」ことそのものよりも、その期間に自分が何を主体的に経験するかです。制度が整っていなくても、まずは自分が主担当になる時間を意識的に作ることから、今日から始められるはずです。

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