アメリカの幼児教育の現場では、子どもが自分で考えて行動する”主体性”を育むための具体的な手法として、ハイスコープ(HighScope)教育モデルの”プラン・ドゥ・レビュー”というルーティンがよく知られています。一方、日本ではモンテッソーリ教育や知育玩具の話題に比べると、この手法への言及はまだ少ない印象があります。今回は、共働き家庭でも日常の中で取り入れやすいこの考え方を紹介します。
ハイスコープ教育モデルとは?その知見の概要
ハイスコープ教育モデルは、アメリカのミシガン州にある非営利団体「ハイスコープ教育研究財団(HighScope Educational Research Foundation)」が提唱する幼児教育のアプローチです。心理学者デイビッド・ワイカート(David Weikart)らによって開発され、長年にわたりアメリカの幼児教育現場で実践されてきました。このモデルの中心にあるのが、子ども自身が「今日何をするか」を考え(プラン)、実際に行動し(ドゥ)、最後に振り返る(レビュー)という3段階の習慣、通称”プラン・ドゥ・レビュー”です。
エビデンス:ペリー・プレスクール研究という根拠
ハイスコープの教育効果を語るうえでよく引用されるのが、1960年代にミシガン州で始まったペリー・プレスクール研究(Perry Preschool Study)です。この研究は、低所得家庭の子どもたちを対象に、ハイスコープ型のカリキュラムを受けたグループとそうでないグループを長期にわたり追跡調査したもので、教育経済学の分野でもしばしば参照される研究のひとつです。ノーベル経済学賞を受賞した経済学者ジェームズ・ヘックマン(James Heckman)氏も、この研究データを用いて幼児期の教育投資の重要性を論じています。海外の育児・教育研究では、幼児期に自分で選び、考え、振り返るという経験の積み重ねが、将来の学習意欲や自己管理能力につながると言われることが多いです。
“プラン・ドゥ・レビュー”の3つのステップ
- プラン:今日どんな遊びをするか、どのコーナーで過ごすかを子ども自身に考えさせ、言葉や指差しで表現してもらうステップ
- ドゥ:実際にその遊びや活動に取り組む時間。大人は口を出さず見守るのが基本
- レビュー:活動が終わったあとに「どうだった?」「何が楽しかった?」と振り返りを促すステップ
日本の家庭での実践方法①朝の”プラン”タイム
我が家では平日の朝、保育園に行く前の数分間を使って「今日は保育園で何をして遊びたい?」と聞くようにしています。最初はうまく答えが返ってこないこともありましたが、繰り返すうちに「ブロックやる」「お絵かきする」など、短い言葉で自分の予定を話せるようになってきました。忙しい朝でも、1〜2分程度のやり取りから取り入れやすい習慣です。
日本の家庭での実践方法②帰宅後の”レビュー”タイム
夕食やお風呂の時間に「今日は何が楽しかった?」と振り返りの質問を投げかけるのもおすすめです。うまくいかなかったことも否定せず受け止めるのがポイントで、「できなかったこと」よりも「次はどうしたいか」に目を向けさせると、子ども自身の振り返る力が育ちやすくなると言われています。
まとめ
ハイスコープ教育モデルの”プラン・ドゥ・レビュー”は、特別な教材や長い時間を必要とせず、日常のちょっとした会話の工夫から始められる考え方です。知っているだけで、子どもへの関わり方が少し変わるかもしれません。今日の帰り道や夕食の時間に、ぜひ”今日は何が楽しかった?”のひと言から取り入れてみてください。

